「お客様、ここは豆腐屋さんなのでマンモスの毛皮は売っていません。はい、豆腐屋さんです。時計屋さんじゃないです。時計屋さんだったとしてもマンモスの毛皮は売ってないです。」

 

「私はウーパールーパーですが。」

 

 

 

外から会話が聞こえる。僕は「豆腐屋さんにもマンモスの毛皮を置いておいた方が良いのかもしれない……!!」と思った。

 

8月になるとあの子はいつも歯磨き粉をぶちまけてワァワァ泣いていた。僕はそれを団地のベランダから見ていた、が、団地なんて無くてそこはコインランドリーだった。脳がぐるぐる回って記憶が洗われる。

 

泥まみれのキッチンのせいで気分が悪くなったのでテレビを付けたら「衝撃映像特集」が放送されていた。大暴れする動物や子どもの面白動画が次々と流れる。宇宙の走馬灯みたい。

 

救出劇の後、突然カルガモの顔が画面いっぱいに映し出された!!!!なんだこれは!!!!これが1番衝撃だった。カルガモの顔をこんなに長い時間見つめたのは初めてだ。

 

もう50分くらい経ったがまだ画面にはカルガモの顔が映っている。このままだと変になってしまう。実際、目を閉じてもカルガモがうっすらと見えるようになってきた。


チャンネルを変えると血まみれの枕を抱えた犬が、ニヤニヤしながら「燃え尽きた、燃え尽きた、燃え尽きた」と何度も繰り返していた。テレビがおかしくなった。

 

外に出るとお祭りが始まっていた。天使がりんご飴を売っていたので怖くなって家に戻ったら寝室の壁に大きく「ダメだと言われました」と書かれていた。