全く動かない雲になりたい。
風の強い日に現れ、他の雲たちがヒュゥと流れる中、僕だけが空の真ん中でじっとしていたい。
ふと空を見上げた人や機窓から景色を眺めていた人に「あれ?なんかアイツだけ動かなくない?」と思われたい。
どこから見ても、空の真ん中に在りたい。
遠い国の子供にも「あれ?なんかアイツだけ動かなくない?」と思われたい。
SNSで「妖怪」とか「人工台風」とか言われたら、少しだけ動いて、さらに騒然とさせたい。
そんなことを考えながら僕は定食屋に入った。
店員「いらっしゃいませ」
僕「日替わり定食ください」
店員「いいかいいいかいいいかいいいかいいいかいいいかいいいかいいいかいいいかいいいかい学生さん学生さん学生さん学生さん学生さん学生さん学生さん学生さん学生さん学生さんトンカツトンカツトンカツトンカツトンカツトンカツトンカツトンカツトンカツトンカツ」
壊れてしまった。
画質が粗くなっていく店員を横目に僕は定食屋の窓を突き破って走り出す。
そして停車していたタクシーの窓を思い切り叩いて
「最果てまで!!!!!」
と大声で叫んだあと、運転手に有り金を全て渡したら、旅の始まりだ!!
〜車内での会話〜
運転手「お客さん泥だらけですけど大丈夫ですか」
僕「いつの間にッッ!!!!なんかいつ見ても天気の話しかしてない情報番組ってありますよね」
運転手「私の体が池だったら水を全て抜いてもらえるのに笑」
僕「ポンプのお店」
〜車内での会話・終〜
目的地に到着した。完全なる森だ。
足元に落ちていた麻雀牌を拾い上げると、魚のようにピチピチと跳ねて腹が立ったので踏み潰して粉々にしてから周辺にばら撒いた。ゼリーのように柔らかかった。
「札束でも落ちてないかな笑」と思いながら森の奥へ進んだが、遠くに「ホテル・詐欺被害」と書かれた看板が見えたので急いで引き返した。
麻雀牌の粉を撒いたところに綺麗な花が咲いていたので「しょうもない!」と思いました。
次の日、ニュースを見たら僕が乗ったタクシーの運転手が捕まっていた。誰も天気の話をしなかった。